どんな企業や組織でもいえるのですが、現場のメンバー・スタッフが独自に考え、仕事を作り出し、成果をあげ、組織が成長するチームというのは理想的ですよね。
例えば企業の営業なら、部長や課長が何も言わなくても営業のリーダーが中心となり、
- 新人営業に様々なお仕事を教えたり
- 相談に乗ったり
- 明るくさわやかな職場の雰囲気作りをしてくれる
…というようなお話を伺うことがあります。実際に私もそういう企業を見かけました。
実際にその企業に行ってみると、実に明るく、てきぱきと仕事が進み、時折談笑も出ていたりします。
でも、ただ楽しいだけではなく、
- 売上の未達のリスクがきちんと報告され、その改善策も直ちに検討される
- 業務連絡の抜け漏れがないように都度細かく情報共有が成される
など、仕事としても完璧を目指す志が高い営業チームでした。
こういう営業チームでは、他の企業や営業と違う、特徴的なシーンを見かけることがあります。
それは、
- 仕事が終わっても、営業達が仲良く談笑していて、すぐに帰らない(もちろん遊んでいるわけではありません)
- 営業達にとって、その職場が居心地よい空間である
ということです。
しかも、営業達が談笑していても、他の人たちが誰一人として嫌な顔をしていないんですね。
これはすごいことです。
営業達が話していると、それを「うるさい」と感じる他の社員は多いですからね。
このように、自分たちも仕事に満足していて、顧客も満足している。
仕事が上手く回っていて、お互いを支えあうことが自然と出来ている。
もちろん顧客への提案やフォローを通じての業績アップにも余念がなく、全員が常に更に上のレベルのビジネスの発展を目指している。
こういうことが、職場をさっと見渡しただけですぐ感じられ、それらの裏づけとしてオフィス機器の配置や清潔さ、社員達の作業しやすい動線などが確認できるんですね。
こういうチームなら、部長や課長は相当楽に仕事が出来ているはずです。
実務は営業達に任せて、自分は社員の教育や部門の将来に関わる様々な業務に専念でき、一層成果をあげる範囲が広がることでしょう。
このようなチームが、成果をあげ、全員が成長できるチームなんです。
そしてこれは、どのような業界、企業、組織で同様です。
でも、同じようなことが、同じ企業の他の部署でもどこまで出来るかは、わかりません。
同じ企業内でも組織が違えば、また雰囲気は変わります。
なぜそのようなことが起こるのかといえば、いくつか理由はあるのですが、もっとも大きいのは
- “部長・課長の器の大きさが違う”
ということでしょう。
企業で言えば、“管理職の器が違う”ということです。
なぜ、管理職の器がチーム作りに影響を及ぼすのでしょうか?
管理職の器の大きさが、そのチームのメンバー・スタッフの育つ大きさにつながるからです。
管理職が全ての仕事を誰よりも上手く、高品質に、低コストに出来る必要はありません。
そういうことが出来るスタッフのために、存分に能力を発揮できる職場環境を用意すればよいのです。
そしてそれが出来る、そういう配慮があるということは、
- 人に対する洞察に優れている
- チーム全体に“居心地の良さを提供したい”という想いがある
などがあるからですよね。
この思いにいたるには、
- そもそも自分は、どんな仕事をしたいのか?
- その仕事の意義は何か?
- その仕事に就くことで、自分は何を達成できるのか?
- 自分が将来なりたいものは何か?
などを思い巡らし、自分自身の背景を探究することが必要です。
この探究こそが、人の器を作るのです。
だから、管理職の器の大きさの違いは、自分自身の背景の探究の深さの違いでもあります。
このように人を大切に出来る人は、大きな仕事が出来ます。
その方の器が大きいのですから、得られる結果も大きいんですね。
そして、チーム全員を承認し、感謝と尊敬の気持ちを忘れずに、その思いをチーム全員に伝えることが、チーム全員が感じる“その職場の居心地の良さ”につながります。
それが、先にお伝えした“チームワークが良い病棟”です。
職場や仕事内容について部署またはチームの社員全員の満足度が高ければ、その社員が関わる顧客の満足度も高まります。
なぜなら、職場や仕事に満足している社員は、“やりがい”と“プロとしての誇り”を持って仕事に当たりますから、顧客への接し方やコミュニケーション、配慮なども一層顧客に寄り添っていきます。
そうすると、心のこもった看護が出来るようになります。
そのため、顧客満足度が高まるのです。
そして、顧客から人気が出て、評判が高まり、売上が伸びていきます。
そのため、自社のスタッフの雇用の安定等につながり、社員の満足度も高くなって・・・と、ポジティブなスパイラルが生み出されます。
これを、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、“サービス・プロフィット・チェーン (Service Profit Chain) ”と呼びます。
これはサービスマネジメントの第一人者のジェームズ・ヘスケットらがハーバード・ビジネス・レビューに提唱した考え方で、発表から既に20年経過した今でもなお、サービス業が成果をあげるための黄金律と位置づけられています。
サービス・プロフィット・チェーンの基本的な考え方は、組織が従業員を大事にすれば、従業員は顧客によいサービスを提供するというものです。
そうなると顧客の購買が増え、企業の売上げと利益が増大します(上記の通りですね)。
そうして得られた利益によって、企業は従業員満足と顧客満足をさらに高めることができるというものです。
この好循環は小売業のみならず、先進各国で経済の中核を成すサービス業全般に言えることが証明済みということも見逃せません。
このサービス・プロフィット・チェーンを実践し、成果をあげている実際の企業には、ディズニーやリッツ・カールトンなどが知られています。
それらの関連書籍もよく見受けられますね。
ヘスケットらの論文では、サービス・プロフィット・チェーンを実践する上で重要なことがいくつか明らかにされているのですが、その中の一つに
- サービス・プロフィット・チェーンとは、企業の生き様・在り方である
という指摘があります。
これは、既にお伝えした“管理職の器の大きさ”にもつながります。
管理職が自分自身を探究し、人間について洞察し、「チーム全員に幸せになって欲しい」と思うあり方であれば、おのずとサービス・プロフィット・チェーンは上手くいきます。
このことを、中国の古典で一言で表現すれば、
といえるでしょう。
“隗より始めよ”とは、ざっくり申し上げますと、昔の中国の王様に、隗という人が、
「私のようなものでも大切にすれば、素晴らしい人材が集まってくるでしょう」
「だから、まずは自分自身の取り組みから変えてはいかがでしょうか?」
と進言したお話しから来ています。
これはどのような組織でも同じことでしょう。
企業の部長・課長が、営業を大切にする。
企業が、社員を大切にする。
その結果、それぞれの現場の担当者が奮起し、やりがいを持って仕事に当たり、顧客に喜ばれ、成果をあげるんですね。
スタッフやメンバーが主体的に自ら取り組み、成果をあげている組織は、そして組織の管理職は、こういう取り組みをしています。
当たり前のことですが、これを実践し続けているところが、今後も生き残っていくんですね。
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