前回、「売上は達成して当たり前」「儲けを出して当たり前」ということをお伝えいたしました。
なぜ「売上は達成して当たり前」「儲けを出して当たり前」なのか、お考えいただきましたでしょうか?
「民間企業は、営利組織なのだから、利潤を追求するのは当然だ。」などと、まことしやかに言われますよね。
でも、民間企業が利潤を追求することとは、こんなに薄っぺらいことなのでしょうか?
では、売上・儲けについての私の解釈をお示しします。
◆ 「利益」って、一体何?
私が敬愛してやまないピーター・ファーディナンド・ドラッカーによれば、利益(ここではドラッカーの著書「現代の経営」に則り「利益」と表記します。「儲け」とは厳密には意味が違うので、ドラッカーの指摘に準拠します。「儲け」については別途解説します。)を下記のように解説しています。
- “事業体とは何かを問われると、たいていの企業人は利益を得るための組織と答える。たいていの経済学者も同じように答える。この答えは間違いなだけではない。的はずれである。”
- “もちろん、利益が重要でないということではない。利益は、企業や事業の目的ではなく、条件なのである。また利益は、事業における意思決定の理由や原因や根拠ではなく、妥当性の尺度なのである。”
ちょっとわかりにくいですよね。
そこで、ドラッカーの別の解説もお示しします。
◆ 「利益」の4つの役割
ドラッカーの思想をわかりやすく解説してくれる書籍に、
という良書があります。
この本では、利益を「未来へのコスト」であるとし、利益に対するドラッカーの指摘を下記の4つの役割でわかりやすく示しています。
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- 成果のバロメーター
→ 企業の成果、顧客の創造という活動が、どの程度達成されたのかを判断するための基準になります。これを見ることで経営の舵取りがより円滑になります。 - リスク回避の保険
→ 企業が継続して顧客のニーズに対応していくには、不確実性というリスクを回避しなければなりません。利益はそのための保険となります。 - 労働環境形成の原資
→ 企業が存続することで、そこで働く人は職場を確保できます。職場を確保できなくなった製薬企業がどうなったか、何を行なったかは皆さんも良くご存知ですよね。雇用を作り出すことは、大きな社会貢献の一つです。さらに、継続した利益の獲得は、労働環境の改善にも役立ちます。 - 社会サービスや社会資本の整備の原資
→ 利益は、CSR(企業の社会的責任:corporate social responsibility)や企業メセナの原資になります。
- 成果のバロメーター
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このように、「利益」には重要な役割があります。
従って、企業が「利益」をあげるということは、「その企業を存続させよう」と思うなら、「そこで働き続けよう」と思うなら、やって当たり前のことなのです。
◆ 誰もが忘れがちになるけれど…
皆様もその企業に入社する際、待遇等の条件はもちろんですが、
- その企業が何をしていて、
- どのような価値を社会に提供していて、
- その企業が大切にしているミッションやビジョンが何か?
も調べたことと思います。
そしてその上で、その企業に入社されたのですよね?(泣く泣く、嫌々ながら入社された企業であったとしても、その企業に入社することを決めたのはあなたですから、結局あなたの責任ということですよね)
ならば、その企業の組織人として、その企業を存続させるために「利益」を上げ続けるということは、その組織人として取り組み続け、結果を出し続けて当然のことなのです。
「民間企業は、営利組織なのだから、利潤を追求するのは当然だ。」
なんと器の小さい話でしょうか。ちっちゃ過ぎます。ダサいです。ダサ過ぎます。
これが、前回のコラムで私が書いたことの真意です。
皆様が手にしている給料やボーナスは、給料日になると自動的に振り込まれるお金ではないんです。
経営者から見たら、社員への給与の支払いは、コストそのものなのです。
それを考えたら、今目の前にいる顧客に対して何をすべきか?も明確になることでしょう。
顧客に価値ある提案ができなければ、あなたの顧客・企業の顧客は、顧客で無くなります。顧客とは、社会とは、そういうものです。
結果を出し続けるには、顧客に対して価値を提供し続けることが求められるのです。
「じゃあ、『利益』と『儲け』は、どう違うの?」と思う方もおられることでしょう。
次回は、『利益』と『儲け』の違いを、皆様と一緒に見てまいります。
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