いろんな企業の方とお話をしたり、研修の講師の依頼を受けると、様々な企業の管理職の方々にお会いします。
予算を達成させるためのプレッシャーがますます強まっているようで(2000年以降の成果主義の弊害とも言えますね…)、今期の目標をどのようにして達成するかという“目先の手段”を模索している方が非常に多いと感じます。
例えば、研修をしていると
- それをやったら売れるんですか?
- いくらくらい売り上げが伸びるんですか?
といった質問が多いんですね。
これはこれでよく分かります。
企業や営業は結局数字を追われますし、評価でも大きなウェイトを占めますよね。
販売実績を伸ばすから、その利益を新製品や新サービスの開発にまわせますし。
ですから、販売実績が今後の企業の成長の基盤となることも当たり前の話です。
ただ、そもそも企業が業績を伸ばすということは、企業が顧客のニーズを捉え、顧客の悩みや困りごとを解決し、顧客が満足し、納得し、感動し、企業が提供する財・サービスに顧客が共感してくれるからです。
つまり、“顧客あっての自社”なんです。
このビジネスの原理原則を忘れて、自社の売上のみを追いかけると、とたんに顧客は企業から離れていきます。
2016年なら、自動車業界でデータの粉飾によって顧客の信頼を失墜させ、ライバル企業に買収されたところもありました。
自社の車のデータを良く見せ、顧客に自社の車を買っていただいた企業は、顧客から「お前はオレにうそをついたな!」と怒りを買ってしまったんですね。
それからの顧客離れは、まさに電光石火で、あっという間にライバル企業に買収されてしまいました。
そして、残念ながらこのような事例は、歴史を紐解けばいくつも出てきます。
このような事態に陥らないようにするには、
- 現場の営業職を束ねる管理職(ファースト・ライン・マネージャーとか所長、課長などとも呼ばれますね)が、どのような考えを持って販売目標を管理するか?
を、企業は慎重に見極める必要があります。
早い話が、
- 数字ありきで部下への活動の指示を出す管理職は、極めて危険だ
ということです。
管理職が
- 「数字は顧客からの支持・評価・満足度」
- 「数字を伸ばすなら、自社のファンを一人でも多く増やす(面拡)」
- 「数字を伸ばすなら、自社のファンをリピーター化する(量拡)」
- そのために、顧客が困っていることは何か?、それをどのようにして解決できるか?、その際自分たちはどのようなお手伝いが出来るか?をしっかり考えるよう部下に指導する
というビジネスの原理原則に徹底してこだわり、その結果が実績を伸ばすことにつながるということをやって見せ、実際の成果を示し、部下を育成してはじめて、成果をあげられる強いチームが生まれます。
このとき、本当に大切なことは、
- 管理職自身が、そのようにして“チーム全体の育成と成長を促す”ということに、本気で立場を取る
ということです。
そのように本気で立場を取った人の発言は、説得力がありますよね。
本人の心からの声ですから。本人の発言や生き方が言行一致してますから。
だから真実味も迫力も増すんですね。
そして、そのような立場を取って仕事をすると、本気で“顧客の悩み・困っていること”について突き詰めて考え、取り組めるんですね。
立場を取らない人とは、思考の深さがそもそも違いますから。
さらに、このような立場を取るということは、
- たとえ実績がすぐにあがらなくても、実績が上がるまでじっくり取り組む
- もし実績があがらなくても、責任は自分が取る
という覚悟も求められます。
ですが、逆に
- 「うちのチームのメンバーは、全然考えが足らない。」
- 「メンバーからは新しい取り組みやアイディアが全然出てこない。」
などという、安直な考えで部下を批判しながら仕事をしていると、長期的に安定して実績を伸ばすことが難しくなります。
これでは部下も成長が期待できませんし、それは部下の将来の人生を不幸にすることにもつながりかねないんですね。
部下の人生・部下の家族の生活も背負っているのが、管理職ですから。
短期的に、半年で業績を伸ばすための方法を考えるというのも“今までの凝り固まったやり方を打破して、新しい取り組みにチャレンジしてみる”という目的なら良いのですが、単純に半期の目標を達成するということのための取り組みであるならば、そのやり方で3年間とか5年間、連続して目標を達成することは難しいでしょう。
だからこそ、管理職がどのような立場を取って仕事をするのか?ということが、極めて極めて重要なんです。
覚悟を決める。
腹をくくる。
そこから仕事も人生が開けるんです。
皆さんご存知の“武士道とは、死ぬる事と見つけたり”という葉隠の名言は、“将来も生き延びるために、目の前のことに全力であたる”ということなんですよね。
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