前回、営業活動の成功事例の共有について皆様と一緒に見てきました。
今回は、人材育成の成功事例の共有について見てみましょう。
◆ 結果を出しているスーパービジネスマンのやり方やコンピテンシーを共有、横展開する…
人材育成のために、結果を出しているスーパービジネスマンのコンピテンシーを分析し、結果を出している人の行動特性を抽出し、それを他のビジネスマンに教えるという取り組みもよく聞きます。
そのためのコンピテンシーの分析手法もたくさんあり、それらを駆使しながらスーパービジネスマンのコピーをたくさん作り出そうとしている企業は、多くの業界で多数見られます。
でも、このやり方で「結果を出したスーパービジネスマン」をさらに増やせていますか?
私が見たところ、そのような企業は少ないようです。
これもなぜでしょうか?
◆ 人材育成でも成功事例の共有、横展開で上手くいかないのは、当たり前。
人材育成でも、スーパービジネスマンと凡庸なビジネスマンとでは、
- パラダイム
- コンピテンシー
- スキル
- 発想の柔軟さ
- 思考の深さと特性
- 情報収集能力
- プレゼンテーション能力
- コミュニケーション能力
などが全く違っていることにより、一部のスキルはコピーできても真の意味で成功するスーパービジネスマンの価値観や目の付け所、意図やその背景などまではコピーできないからです。
これがコンピテンシーのモデルの限界でもあります。
人というのは、あるモデルに当てはめ、いくつかに分類できるほどシンプルではありません。
それは、全ての企業や人間に共通する絶対不変のコンピテンシーモデルや人間の特性の診断がないことと同じ意味を持ちます。
むしろ、スーパービジネスマンは、凡庸なビジネスマンよりも、
- 多くの顧客に対して適切に自分をフィットさせられる
- 相手とのスムーズな意思疎通を図ることができるコミュニケーションのセンスを持っている
などによって大きな結果を出しています。
ここに気付くことが、人材育成の第一歩です。
コンピテンシーやスキルといった、わかりやすい表面的な部分のブラッシュアップではなく、このような根本的なところをしっかり把握・理解し、そこから改善を図る方が結果が出やすいです。
◆ 人材育成では、最初に「末端の人材に直接トレーニングする」のが、間違い。初めにトレーニングすべきは・・・
人材育成は、非常に悩ましいものです。
新人、若い人、異動によるキャリア不足、チーム全体に与える人柄の影響などなど、人材育成のポイントはたくさんあります。
そのポイントに関係する真の課題も様々です。
それらを正しく把握して、適切に対応していくことが、人材育成における真の課題解決であり、人材の成長に繋がります。
人材育成には、予算・時間・労力・短期間での最大の成果など、鑑みる必要がある点が多々あるのは承知しております。
だからこそ、「若手を育てられる管理職を先に育成しておく」ことが極めて重要なのです。
本社の研修担当者が教えられることは、研修中だけです。
その研修の前後での管理職の関わり方やフォローの場面で、人材育成のために機能するように取り組むことが最も重要です。
若手が実務中にわからないことやうまくできないことを、日頃から若手と付き合っている管理職がきちんとフォローすることで、若手が伸びるのです。
人材育成を担当する企業の研修担当者の方々の中に、成功事例を欲し、自社内に共有したい方が多いのですが、これまで見てきたように、真の人材育成において成功事例の共有化・横展開は機能しません。
真の課題を解決していませんから。
だからスーパービジネスマンのコピーが量産できないのです。
もしスーパービジネスマンの仕事の仕方や考え方を、他のビジネスマンに広めたければ、研修ではなく、スーパービジネスマンとの対話の場を作って話し合うことも人材育成につながります。
人材育成でももっと知恵を絞ってやれば、まだまだやれることはありますよ。
次回は「システムの導入時に、なぜ他の成功事例を導入しても自分のところではうまくいかないのか?」を皆様と一緒に見てまいります。
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