「営業は自分自身を売れ」は、成功の原理原則か?

営業職であれば、多くの方が上司や先輩から

「営業は、自分自身を売れ」

と指導されたことがあるのではないでしょうか?

これ、私はずーっと、違和感があったんですよね。

冒頭の「営業は、自分自身を売れ」というのは

「お客さんに自分自身を買ってもらえれば、自分が担当している商品を買ってもらえる」

という理屈で成り立っているお話ですが、私は5つの点で疑問です。

  1. 「お客さんに自分自身を買ってもらえれば、自分が担当している商品を買ってもらえる」とはいうものの、担当している商品が“お客さんが絶対に不要なもの”は売れないのではないか?
  2. 「お客さんに自分自身を買ってもらえれば、自分が担当している商品を買ってもらえる」ということは、自分の人柄で売っているため、自分が人事異動になったらそのお客さんとの関係はご破算になり、後任者はまたその関係作りからやらなければならず、極めて非効率だ
  3. 「お客さんに自分自身を買ってもらえれば、自分が担当している商品を買ってもらえる」というのは、よく考えると理屈が飛躍している。営業がお客さんに好かれても、担当商品まで好かれるとは限らない(「以前歯科で、歯科医師から「あなたのことは好きなんだけど、あなたの製品はいまいちなんだよね」といわれていた営業の方がいました)
  4. 「お客さんに自分自身を買ってもらえれば、自分が担当している商品を買ってもらえる」というのは、商品が“何を使っても一緒”という商品でのみ有効な考え方であり、品質等で圧倒的に負けている商品では無力
  5. 「お客さんに自分自身を買ってもらえれば、自分が担当している商品を買ってもらえる」というのは、売り方を営業に依存しており、商品が自動的に売れる仕組み化(システム化)ができていない

結局、「お客さんに自分自身を買ってもらえれば、自分が担当している商品を買ってもらえる」という考えは、自分とお客さんのことだけを考えた、極めて近視眼的な発想なんです。

いつまでも“売れる仕組みづくりができていない”ということです。

会社から見れば、特に経営者から見れば、「で、いくら儲かるの?」ということが重要なんですよ。

にもかかわらず、現場でいちいち営業担当者がお客さんとの関係構築から始めなければ売れません、儲かりませんというのでは、経営者からダメ社員とレッテルを貼られます。

経営者が欲しいのは、

  • 誰が営業として担当しても、その商品が売れ続けるシステム
  • その商品の価値を世の中に広く知らしめ、放っておいてもその商品が売れ続けるシステム

なのです。

人柄で商品を売るのではなく、もっと効率良く、自社や自社が提供する財・サービスのファンになってもらい、誰が担当してもそのお客さんが必ず自社から購入してくれる取り組みをすることの方が、遥かにスマートだし、効率が良い(企業の生産性を高めるのは、多くの企業の目下の経営上の課題ですよね)です。もちろん、商品力を高めることも、ビジネスを成長させる車輪の両輪ですね。

人間関係を作り、お客さんから信頼されてからビジネスが始まるのは、ビジネスの原理原則です。

ですが、信頼関係ができても、その後簡単にモノが売れないのが現在です。だって、世の中にモノがたくさんあるじゃないですか。いくら新しいモノを作ってもすぐに陳腐化が始まるし、似たようなモノ・より安いモノが続々と出てくるわけで。

こういう現実をしっかり見据えた上で、お客さんと本当に機能する商談を指導できない上司は、上司を辞めた方が会社と部下の将来のためになります。

営業は確率であり、サイエンスであり、頭を使うんです。

これからは、現場主導のマーケティングを一層加速させないと、その地域のニーズに合致したプロモーションはできません。

お客さんとの信頼関係だけで売れるのは、一般消費財や高級消費財くらいです。

お客さんとの信頼関係だけで売れるほど、多くの業界は甘くないです。

ビジネスにおいてお客さんとの信頼関係は、あって当たり前です。その先に、何をするのか?が重要なんです。営業はそこを考え、上司はそこを指導すべきですね。

「営業は自分自身を売れ」は、成功の原理原則か?を、よ~くお考えになる方が良いですね。

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