「儲け」と「利益」は、決定的に違う

前回のコラムで、なぜ「儲け」が必要なのか?を皆様と一緒に見てきました。

そして、そのコラムの最後に「『儲け』と『利益』は違う」ということも書きました。

一見、「儲け」も「利益」も同じように見えますよね。

例えば損益計算書では、「収益から費用を差し引いたものが『利益』」という記述ですしね。

そこで今回は、この「儲け」と「利益」の違いを一緒に見ていきましょう。

◆ そもそも「利益」って何?

前回に続き、ドラッカーに登場いただき、「利益」について考えます。

ドラッカーは、著書『すでに起こった未来』で下記のように示しています。

  • 彼ら(企業人)自身、利益や利益率について初歩的なことを知らない。
  • 利益に関する最も基本的な事実は、「そのようなものは存在しない」ということだからである。
  • 存在するのは、コストだけなのである。

ドラッカーだけでなく、世界的に著名な投資家ウォーレン・バフェットも「利益」を重視していないそうです。

これは一体何を意味しているのでしょう?

企業の業績を評価・判断する際、私たちは1年での単年度決算もしくは連結決算で「利益」を計算します。

しかし、このようにして算出される「ある期間の利益」は、実は信頼するにはあまりにも危ういんですね。

例えば企業に勤務する営業の方なら、「期末の売上金額の調整」を経験したことがある方もいることでしょう。

「期末の売上金額の調整」は、来月以降の数字(実績)を前倒しでいただくことを意味しています。

つまり、「利益」を出すために支払い時期を変更することができるため、実際の「利益」が分からなくなるということなんです。

毎年毎年企業の業績や経営状況を評価するために用いられる「利益」とは、こういう性質なのです。

とは言っても、決算報告を毎年しなければならない企業であれば、これは致し方ないのが実情なのですが…。

◆ では「儲け」とは何?

ズバリ、「儲け」で意識すべきは「キャッシュフロー」です。

そして経営者が信用すべきなのもこの「キャッシュフロー」です。

なぜなら上記の通り、会計期間に関係なくビジネスは行われるからです。

企業は、利益の大小に関わらず、現金を用意できなければ破綻します。

ある企業が、6ヶ月後に100億円の売上が上がることがわかっていても、1ヶ月後にくる10億円の支払いができず、銀行がその企業にお金を貸してくれず、自前でも現金が用意できなければ、その企業は破綻することになるのですね。

これ以上は会計のお話になるので詳しくは触れません。

ただし、これまで見てきた通り、「儲け」と「利益」が決定的に違うことは、覚えておいて損はありませんよ。

備考

上記の会計は、原価計算方式を示しています。

現在では、Activity Based Costing(ABC原価計算)という計算法もあります。

これは、ビジネスのプロセス全体のコストを扱う計算方法です。

そして本質的に、顧客は、その財・サービスを利用するにあたり、利用するまでのプロセス全体にかかったコストを負担するのです。

そう考えると、同じ製品を扱うにしてもコストをかけない方が好ましいし、コストをかけずにより付加価値を高める取り組みを検討してみるというのも、顧客や企業に対する貢献になりますね。

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